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私とハーブとスパイスと

8月2日のハーブの日を記念して、料理家として長年活躍されている栗原はるみさんと一緒に、このアカウントを始めることにしました。
今回は、毎日の暮らしに溶け込んだハーブとスパイスの魅力やエピソード、気軽な楽しみ方などを、栗原さんに教えていただきました。

夏はハーブが元気です

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庭の月桂樹(上)と花の咲いたレモンマートル(下)

今年もうちの庭には、ハーブがたくさん育っています。
4月、高さ2mくらいになった月桂樹に花が咲きました。生葉はいい香りがして、乾燥させるとさらに香りが立ち、スープや煮込み料理に重宝します。
5月はタイムやセージに紫色の花が咲きました。ハーブの花は控えめなものが多くて、よく見るととてもかわいいです。
7月初め、レモンマートルに乳白色の花が咲き、小枝を少し切ってキッチンに飾りました。長い楕円形の葉はレモンのいい香りがします。

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庭から摘んだローズマリー、ミント、バジル、タイムにレモンマートルの花をひと枝加えてホーローのピッチャーにいけました。

梅雨が明けてアジサイの花が終わると、真夏の庭は花が少なくなり、木々の緑がどんどん濃くなっていきます。
今年は10種類以上のハーブを3回に分けて地植えしましたが、太陽を浴びて日ごとに大きくなり、元気いっぱいです。毎朝、私は庭に出ると草丈の伸びたバジルやミント、タイムやローズマリーの葉に触れて思いっきり深呼吸。さわやかな香りに満たされて穏やかな気持ちになれます。
顔を近づけてみるとすごい勢いでハーブを食べる虫がいました。虫もおいしいハーブはわかるのでしょうね。

私とバジルとの出合い

私が初めてバジルを知ったのは、結婚してまもないころでした。今から40数年前のことです。
夫婦でコンサートに出かけた帰り、夫がお気に入りのイタリアンレストランに連れて行ってくれました。そこで初めてバジルスパゲッティを食べて感激!フレッシュバジルのさわやかな香り、松の実やにんにく、パルメザンチーズの風味、スパゲッティにからんだバジルソースはグリーンがとてもきれいでした。

こんなスパゲッティをうちでも作りたいな、でも当時はフレッシュバジルが手に入りません。そこで思いついたのがたっぷりの青じそとパセリを刻んで、オリーブオイルで香ばしく炒めたにんにくと合わせ、ゆでたてのパスタをあえるオリジナルレシピです。バジルソースのパスタとはまったく違うでき上がりなのですが、家族には好評で、その後うちの定番になりました。バジルスパゲッティは私がハーブに惹かれていくきっかけになったレシピです。

育てる楽しみと収穫の喜びと

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今日はトマトソースに使おうかな、と思ってバジルを摘んだところです。

当時、憧れだったスイートバジルも今では年中、手軽にお店で買えるようになりました。また自分で苗から育ててみると、見守る楽しみや収穫する喜びがあります。よく使うハーブは大きめの鉢に植えたり、数か所に地植えしています。
バジルは夏の食卓にいくらあっても困りません。フルーツトマトやモッツアレラチーズとサラダにしたり、ピザにのせたり、夏野菜を煮込んだラタトゥイユの香りづけに使ったり。本格バジルソースもひと夏に何度も作ります。

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うちの庭は日当たりがよいせいか、青じその葉(上)もレモングラス(下)も元気いっぱい。

青じそや細ねぎなどの和のハーブは、私が毎日のように食べている納豆や麺類になくてはならない薬味なので、これも大鉢で育てています。タイ料理もうちではおなじみで、パクチーやレモングラスが役立ちます。これも温暖化のせいなのか、とくにレモングラスは毎年みんなに驚かれるほど大きく育ち、今年も私の背丈以上に伸びています。

大好きなハーブがすぐ近くにあって、必要なときに必要なだけ摘み取り、無駄なく新鮮なものを使えるのは、初夏から夏が中心とはいえとてもうれしいことです。

夫が教えてくれた料理

私の夫は洋風な暮らしの中で育ち、料理も上手でしたから、結婚当時からキッチンには、スパイスやドライハーブのビンがいくつも並んでいました。夫に教えてもらい、上手になった料理はたくさんあります。
中でもペッパーステーキは1週間に1度は食卓に載り、粗びきのブラックペッパーをたっぷりふって、仕上げにはハーブバターを溶かすのが夫好み。ワインを添えたテーブルセッティングもうれしくて、和風の暮らしで育った私にはもう、まったく違う世界のトビラが開いたようでした。

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グリルパンで焼いたステーキに香りのよいブラックペッパーをミルでひいて多めにかけ、パセリバターをのせると風味が増します。

コーンドビーフ(コーンビーフのこと)は、牛かたまり肉を塩水、ブラックペッパー、オールスパイス、ローレル、タイム、セージなどと刻んだ香味野菜で1週間ほど漬けてから、やわらかくなるまで煮る手間のかかる料理ですが、ほろほろとほぐれる牛肉の味は素晴らしくて、夫の隣で手伝いながら作り方を覚えたのを思い出します。

ローズマリーはしょうゆとも合う

だいぶ前にロンドンへ行ったとき、イギリス人の友人がローズマリーを気軽にいろいろな料理に使っていたのが、とても新鮮で刺激を受けました。
それから私もローズマリーは洋風料理と決めつけないで、いろいろ試すようになりました。そのころ生まれたのがハーブチキンです。赤ワイン、しょうゆ、玉ねぎのみじん切り、ローズマリー、バジル、オリーブオイルを合わせて鶏肉をマリネし、ソテーするレシピです。ローズマリーはしょうゆともよく合うことがわかり、メニューの幅が広がりました。
ただしローズマリーのような香りの強いハーブは、はじめは少量にして味を確かめ、家族の反応も見ながら取り入れていくのがよいと思います。

おいしい、楽しい、ハーブとスパイス

フレッシュハーブやスパイスを使って、私がふだん気楽に楽しんでいるレシピをいくつかご紹介します。

ハーブティー 

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フレッシュハーブでいれたハーブティーはとてもいい香りがして、ちょっと疲れたときにもおすすめです。

温かいハーブティーは、暑いときでもさっぱりしておいしく飲めます。私の好きな組み合わせは、レモンの香りがさわやかなレモングラスとレモンマートル、それにミント。長いものは切ったり、葉先を摘んだりしてポットに入れ、熱湯を注いで少しおき、きれいな色と香りが広がったら飲みごろです。

ミントシロップ

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使いきれないミントがあればぜひミントシロップに。ミントは数日したら取り除き、保存は冷蔵庫で。

小鍋に砂糖100gと水200mlを合わせて火にかけ、少し煮詰めてシロップを作ります。これを冷まし、フレッシュミントと合わせればミントシロップのでき上がり。アイスティーやフルーツのマリネ、モヒートなどに使ってみてください。

ピクルス

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カリフラワーのピクルスにはコリアンダーシード、ローレル、赤唐辛子。きゅうりにはグリーンペッパー、あればフレッシュのディルも合います。にんじんにはブラックペッパーとカルダモン。セロリはレモングラス、ピンクペッパー、レモンの輪切りを加えました。

私がピクルスを作り始めたのは40年近く前です。洋風の暮らしに憧れていた当時の私には、手作りのピクルスを保存ビンに詰め、蓋に布カバーをかけて並べるのはちょっとした達成感でした。ピクルスに使う野菜は1種類でも、少しずついろいろミックスしても構いません。私は冷蔵庫の中の使いかけの野菜を片付けたいときによくピクルスを作っています。

基本のピクルス液の作り方は、鍋に酢400ml、白ワイン200ml、水150ml、砂糖80g、塩小さじ2を入れて火にかけ、砂糖が溶けたら火を止めて冷まします。
カリフラワーなら、食べやすく切り分けて熱湯でさっとゆでてざるに上げ、冷めたら保存容器などに入れてピクルス液を注ぎ、軽くつぶしたコリアンダーシード、ローレル、赤唐辛子を加えて冷蔵庫で保存します。
ピクルスにはふだんブラックペッパー、ローレル、赤唐辛子、にんにくを加えることが多いですが、持っているスパイスがあったらときどき変えて使ってみるのも楽しいと思います。
ピクルスは漬けた翌日くらいからおいしく食べられます。早く食べたいときは漬かりやすいように切り方を工夫して薄くしたり細くしたり。ピクルスがあると前菜のひと皿やカレーの薬味になり、タルタルソースにはきゅうり以外のピクルスでも刻んで入れたらおいしくなります。

ハーブバター

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フレッシュな香りをとじ込めたハーブバター。写真右から時計まわりにディルバター、タイムバター、バジルバター、パセリバターの4種類。

バターは室温に戻してやわらかくしておきます。タイム、ディル、サラダパセリは水気を拭いて細かく刻み、それぞれバターと混ぜて小さな容器に詰め、冷蔵庫で少しかためてなじませます。

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バジルバターのバジルを層にしたのが思った以上に上手にできて、うれしくなりました。

バジルバターはちょっと違う作り方をしてみます。ミニパウンド型の紙ケースの底にバターを少し詰め、バジルの葉をのせて上にバターを重ねます。これを何回か繰り返してバジルを層にし、冷蔵庫で冷やしかためます。型から出して器に盛り、スライスすると切り口がとてもきれいです。

ハーブバターはカリッと焼いたフランスパンと食べたり、肉や魚を焼いてのせればハーブバターソースになって風味が増します。冷凍保存もできますからハーブが少しだけ残ったときなど、作ってみると楽しいですね。

おわりに

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手作りのチーズケーキを私はよく手みやげにしています。シンプルなラッピングに小さなハーブを添えて、感謝の気持ちを伝えられたらと思っています。

栗原はるみさんの、日々の暮らしの中で身近なハーブ、そしてスパイスの素敵なお話、いかがでしたか。
最後にこんなひとことをいただきました。
「私がこのごろ思うのは、今をより丁寧に暮らさねばいけないということ。ささやかなことでもやってみると元気になったり楽しい気持ちになったりします。これを読んでくださっているみなさんもいろいろ大変なことがあると思いますが、今日という大切な一日を笑顔で過ごせますように願っています。」

次回はクリームシチューのお話をうかがう予定です。どうぞお楽しみに。